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平成27年度 事業報告書(平成27年4月1日〜平成28年3月31日まで)

T 事業の概要
   当財団は平成25年3月に内閣府より公益財団の認可を得、平成25年4月1日に公益財団移行
  登記を行い、公益目的事業の推進に力を注ぎ実施してきた。
   公益目的事業の「1」として、前年度に引き続き、糖尿病に関する調査研究に対する助成事業の
  推進を図るとともに、糖尿病に関する予防キャンペーンによる正しい知識の普及啓発活動の実施及
  び助成を行い、また国際交流活動等を積極的に実施した。
   公益目的事業の「2」として、厚生労働省が推進する糖尿病予防のための戦略研究のうち2型糖
  尿病患者の血管合併症抑制のための介入試験を実施してきた。


U 事業の内容 (下記助成についてはホームページにも掲載している)

 公益目的事業1

 1. 研究助成
  (1) 糖尿病 に関する調査研究に対する助成
    糖尿病合併症の種類・治療状況などの実態調査・研究、遺伝子異常による発症機構の研究、
    動物実験での発病メカニズムの解明を目的とする制約のない研究など、幅広い糖尿病に関
    する研究の公募を行ったところ、全国から36件の応募があり、選考委員会において研究
    の計画性、予防・治療への応用性、治療薬の開発等の面から応募課題の5段階評価を行っ
    た。慎重な審査の結果、5名に対し総額500万円の助成を実施した。(別添1)

  (2) べーリンガー/リリー共同研究助成
    Sodium glucose cotransporter 2(SGLT2)に関する研究(基礎研究に限る)に関し国内在
    住研究者に制限し募集を行ったところ全国から18件の応募があり選考委員会において
    研究の計画性、予防・治療への応用性、治療薬の開発等の面から応募課題の5段階評価を
    行った。慎重な審査の結果、3名に対し総額9百万円の助成を実施した。(別添2)

  (3) 日本イーライリリーとの共同による研究助成
    インクレチンに関する基礎研究に対する公募を行ったところ全国から26件の応募があり、
    選考委員会において研究の計画性、予防、治療への応用性、治療薬の開発等の面から応募
    課題の5段階評価を行った。慎重な審査の結果、8名に対し総額8百万円の助成を実施し
    た。(別添3)

  (4) コストコホールセールジャパン(株)との共同による研究助成
    小児又は若年発症糖尿病(いずれも型は問わない)に関する基礎的又は臨床的研究に対す
    る公募を行ったところ全国から6件の応募があり、選考委員会において研究の計画性、予
    防、治療への応用性、治療薬の開発等の面から応募課題の5段階評価を行った。慎重な審
    査の結果、4名に対し総額4百万円の助成を実施した。(別添4)

    選考委員
      委員長  春日 雅人  国立国際医療研究センター 総長
      委 員  石橋  俊  自治医科大学 内分泌糖尿病内科 教授
      〃    宇都宮一典  東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 教授
      〃    柏木 厚典  滋賀医科大学付属病院 病院長
      〃    河盛 隆造  順天堂大学医学部 特任教授
      〃    寺内 康夫  横浜市立大学医学部 分子内分泌 糖尿病内科 教授
      〃    山田祐一郎  秋田大学医学部 内分泌・代謝老年医学部 教授


 2. 糖尿病に関する予防及び教育啓発活動の実施及び助成
  (1)当財団独自の事業として糖尿病予防キャンペーン講演会を東日本地区として神奈川県海名
      市において開催した。来場者数は約100名であった。
       日 時  平成27年12月23日(水) 13時〜15時半

       場 所  海老名市文化会館
       世話人  横浜市立大学大学院教授 寺内 康夫 
       開会挨拶 横浜市立大学大学院医学研究科 教授 寺内 康夫
       テーマ 「安全・安心な妊娠のために知っておきたい糖尿病のおはなし」
        T.  安全・安心な妊娠のためのメッセージ 〜産婦人科専門医から〜
        座長  横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学 折目和基
        演者  横浜市立大学附属市民総合医療センター 小畑聡一朗
        U.  妊娠糖尿病と向き合った経験 〜お母さんの体験談〜

        座長  済生会横浜市南部病院 糖尿病・内分泌内科医長 長田潤
        V.  母子を糖尿病から守るために 〜糖尿病専門医から〜
        座長  川崎市立川崎病院糖尿病内科 部長 津村和大
        演者  海老名総合病院糖尿病センター センター長 大森安恵
       ※ その他,食事カロリークイズ・資料展示など

  (2)公益社団法人日本糖尿病協会との共催による糖尿病予防キャンペーン講演会を
     下記のとおり開催した。
      西日本地区として徳島県徳島市において開催。来場者は約200名であった。
       日 時   平成27年11月29日(日) 12時半〜16時半
       場 所   徳島県JA会館 別館:2階大ホール

       世話人   松久 宗英(徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター長)
       開会挨拶  松久 宗英( 徳島県糖尿病協会会長)
       主催者挨拶 岩本安彦(公益財団法人日本糖尿病財団理事長)

            中村 慶子(日本糖尿病協会理事) 
       来賓挨拶  川島 周(徳島県医師会会長)
       基調講演 「糖尿病診療の現状と課題」
        座長  島 健二(川島病院)
        講師  岩本安彦(日本糖尿病財団)
       特別講演1 「糖尿病透析予防の切り札は、減塩!」
        座長   松久宗英(徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター)
        講師   平井愛山(千葉県循環器病センター)
       ブルーエクササイズ「簡単にできる 座りながらブルーエクササイズ」
        講師   平沢良和(関西電力病院 リハビリテーション科 理学療法士)

       パネルディスカッション 「みんなで行う糖尿病重症化阻止の地域ぐるみの対策」
        総合司会  中村慶子 (愛媛大学医学部看護学科)、鶴尾美穂(寺沢病院)
         パネリスト1 平田久美(徳島赤十字病院)
         パネリスト2 煖エ保子(徳島県栄養士会)
         パネリスト3 白神敦久(徳島県立中央病院糖尿病・代謝内科)
       教育講演1 「糖尿病から眼を守ろう─網膜症対策」
        座長   藤中雄一(徳島県鳴門病院内科)
        講師    福田全克(大阪警察病院)
       教育講演2 「糖尿病(または)予備軍といわれたら… 特に高齢期の方の生活で気
             をつけたい点」
        座長    黒田暁生(徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター)
        講師    藤澤智巳(堺市立総合医療センター腎代謝免疫内科)
       閉会挨拶   野間喜彦(徳島県対策推進会議議長、徳島県医師会糖尿病対策班班長)
 

 3. 糖尿病に関する国際交流活動の実施及び助成

   (1)国際交流活動の一環として前年に引き続き、ステノ研修として第9回目はデンマ
      ーク コペンハーゲンHotel.Skt.Petriにおいて「New insight into diabetes
      complications」に関する討論を平成27年5月20日から22日の3日間実施す
      る為の助成を行った。(別添5)
      プログラム(別添6)

 4. 糖尿病医学研究集会及び糖尿病患者の管理向上のための調査研究に対する総合調査研究
    の助成を行った。(別添7)

公益目的事業2
  厚生労働省が推進する糖尿病予防のための戦略研究(J-DOIT3)

    厚生労働科学研究における糖尿病予防のための戦略研究(2型糖尿病の血管合併症抑制
    のための介入試験)の実施
    本事業は、糖尿病の新しい治療指針作りに貢献するものであり、国民の健康増進に寄与する
    ものとして平成17年度より3課題からなる厚生労働科学研究の一環として平成18年6月より
    2型糖尿病の血管合併症抑制のための強化療法と従来治療とのランダム化比較試験を開始
    し、研究進行の途上において、これまで研究の主体であった財団法人国立国際医療研究振興
    財団が平成25年6月30日をもって解散するところとなり、当財団が引き続き継承すること
    となった事業である。
    糖尿病の合併症には、細小血管合併症と大血管合併症とがあるが、いずれの発症頻度も高く
    重症化すると患者のQOLは低下し、死に至ることもある。糖尿病患者の増加により合併症の
    発症、進展予防のための糖尿病の適切な管理方法を確立することが必須である。
    J-DOIT3の研究には全国81か所の協力施設、被験者登録者2,542人の下において実施され、
    特に大血管合併症の抑制を目的とした研究で、生命予後に直結し高額な医療費の抑制にもつ
    ながるものである。プライマリーエンドポイントが想定していた250に達しないこともあり、
    若干試験実施期間の延長が見込まれるものの進捗状況はHbA1c、血糖コントロール、血圧、
    脂質等検査値は目標設定値に近づき、改善が伺える状況にある。
    平成27年度末までの3年間に渡り、研究参加施設の基盤整備を行ない、各施設において試験
    治療が継続された。これにより従来の糖尿病合併症予防に関する大規模臨床研究に比肩する
    十分な平均介入期間を得られた。この間に血糖値を初めとする治療状況が改善した一方、
    重篤な低血糖などの有害事象には明らかな増加を認めなかった。また脱落症例の発生率にも
    改善を認め、試験の質を保つことに寄与できたものと考える。